何故だ。もしも命の残りを月桂樹(ダフネー)のように、ほかの緑よりはいくらか暗く繁り、葉の端々を風の笑みのようにふるわせ、そのようにして過ごすこともなるものなら、何故、人として生きなくてはならないのか、そして運命を避けながら、運命を追い求めるのか。
ドゥイノ・エレギー 第九歌(一連) ライナー・マリア・リルケ(『詩への小路』古井由吉 より)