20100223

『意識の形而上学』(井筒俊彦、中公文庫)読む。途中まで。
不可視かつ不可触。さらに語り得ぬまでのものを相手にするとコトバが減る。真空、黒い穴、がそれらに近づくものを引き込むかのように。形而下の現象から形而上の抽象への道行きが辿る軌跡。「抽象の階段」の極限を目指して登り始めたけれど、その途中で降りてくるような感じがしている。
(形からの上昇が存在論的比喩としたら、深みへの沈潜が意識論的に、対応する喩となるだろうか)
それに対して、抽象の階段を途中で下りる…、現象への帰還は、微細に渡る百花撩乱を回復させる。それも、例えば、ざわめきが止む沈黙の2分間。音景を聴き遣る静かな指向が、狭い先入観の柵を破っていくような柔らかさを伴って。