そうではなくて、この世にあるということは多大のことであり、しかも、この世にあるものはすべて、どうやらわれわれを必要としているが故にだ。この消え行く定めのものが、奇妙にも、われわれに掛かる。もっともはかなく消えて行くこのわれわれに。すべてのものはたった一度、一度限りだ。一度限りで、それきり還らない。われわれも一度限り、二度とはない。しかし一度限りであっても、その一度であったということ、この世のものであったということは、撤回の出来ぬことであると見える。
ドゥイノ・エレギー 第九歌(三連)、承前