神秘劇と夢象

今月はなるべく書いてみよう。
読書は、ユング心理学入門。夢の補償作用。

神秘劇がそのような役割をもっていたように、「夢こそは、治療的な神話 (therapeutic myth)である」とまでいうことができる。[5章 夢分析 P.177 岩波現代文庫版]

あるタイプの劇が、その創作過程まで含めて「治療的」であることは何となく感じていたけれど、それが「神秘劇」と呼ばれうるということを初めて知った。通常は完成された劇作品に対してカテゴライズされるものだろうから、創作の最中までは含まないのかもしれない。でもどこで定義されたのだろう。ニーチェが、夢を神秘劇といったようなので、そこだろうか。『悲劇の誕生』の中らしい。
この他に、目覚めをもたらす一声、例えば目覚まし時計の音が、夢の中へと入り込んでくるようなこと。これを、音がそれまで見ていた夢に入り込んだのではなく、それがきっかけで夢が再構成されたのではないか、とする説明が面白かった。もちろん、夢分析で問題になるのは、夢と現実の順逆ではなく、そこで構成される心象自体にあるのだけれど。
客観的時間の順序とは逆に再構成された夢象。それが本人にとっての現象であるなら、それもまた時計的時間と同じような真なる時間であるように感じる。